一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
『星奈さん』

 ーーでも、彼は。
 私を守って、助けてくれた。

 私を好いてくれている。
 私だけを愛してくれている。

 そんな彼の気持ちに、応えたかった。
 そのためには、陽日さんとの決別が絶対条件なのだ。

 どんなに脅され、暴力を振るわれ、言葉で心を抉られたとしても。
 ーー私は負けない。

 妹に問いかけられた私は、ぎゅっと目を瞑り――勢いよく言葉を吐き出す。

「だ、だったら! なんだって言うんですか……!」

 ずっと言えなかった言葉を無事に唇から紡ぎ出せた。
 その達成感に全身を打ち震わせれば、つまらなさそうに頬へ手を置いている妹と目が合った。

「想いの強さだったら絶対負けませんって? そんなの、あとからでもどうとでもなるし。拘っている理由がよくわかんないんだけど」

 陽日さんは苛立った様子で、私を睨みつけた。

 彼女は自分の思い通りにいかないと、いつもこうして不機嫌になるのだ。
 こうなったらすべてを諦め、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
 私はそうやって、生きてきた。
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