一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「きゃああ!」

 ーー妹の叫び声が聞こえる。

 外に出なければと思うのに、一番近い裏口は炎によって阻まれてしまっていた。
 目の前の退路を断たれたこの状態は、マンション火災の時と一緒でーー。

 それを思い出してしまった私は、恐怖でうまく足を動かせなかった。

 ーー私、このままここで……。
 あの子と一緒に、炎に焼かれて。命を落とすのかな?

 ーーそんなの、絶対に嫌だ……!

 一歩、また一歩と。
 どうにか勇気を振り絞り、ずりずりと後退りをした時だった。

「星奈さん……っ!」

 聞こえるはずのない声とともに、背中から関宮先輩に抱きしめられたのは。

「せ、関宮、せ……?」
「ハンカチで、口塞いで!」

 彼は私に向かって大声で怒鳴ると、カフェの店内に備えつけられていた消化器で火を消そうと試みる。
 だが、勢いよく燃え上がった炎は完全には消しきれず、燻っていた。

「外、出るよ!」

 使い終えた消化器を床に投げ捨てた彼は、私を抱き上げ正面出入口に向かって走る。
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