一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「ありがとう、ございます……」
「どういたしまして」

 感謝を述べれば、彼はしっかりと受け取ってくれた。
 緊張していた私はほっと胸を撫で下ろし、様子を覗う。

 これで話が終わればいいのだけど、関宮さんの瞳は不愉快そうに顰められている。
 いつまた機嫌を損ねるかはわかったものではない。

 ――彼を喜ばせなくちゃ。
 でも、どうやって?

 私が関宮さんにできることは、それほど多くはない。
 名前で呼ぶこと、愛を伝えること。

 その程度すらも恥ずかしがっているようでは、彼の妻を名乗る資格がないだろう。

 ーー彼に求められるがままに結婚を了承するつもりならば、強がる必要などない。 
 自分の素直な気持ちを伝えければ。
 そう考えた私は、か細い声で彼に告げた。

「香月先輩が、ずっと。好きだったのに」
「うん」
「認められなくて……ごめんなさい」
「もういいよ」

 私ははっと顔を上げた。香月先輩が怒っているかもしれないと怯えていたが、どうやら取り越し苦労であったようだ。
 微笑んだ彼は、私を抱きしめる力を強めた。
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