一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「そう思うんだったら、もっと早くに態度を改めればよかったんだ」
「うるさい! あんたには、関係ないでしょ!?」
「星奈さんは俺の妻になったんだ。家族なんだから、彼女を守る権利がある」
「結婚、したの……? あたしよりも先に……?」

 あの子にどんな言葉をかければいいのか、迷っていれば。私の代わりに妹と言い争いを続けていた香月先輩が、爆弾を投下した。

 陽日さんは私達が愛し合っているなど、夢にも思わなかったのだろう。
 開いた口が塞がらない様子を見せた直後。
 先程までのしおらしい態度が嘘のように、怒鳴り散らし始めた。

「こんな女の、どこがいいのよ! お店が燃えて! 保険が降りなくて! 貯金だってない! 常連客からはそっぽを向かれちゃったし……!」
「自業自得でしょ……」
「何よ、それ! 家賃が払えなくなったあたしのほうが、よっぽどかわいそうでしょ!?」
「だから? 俺が星奈さんを好きになったのは、同情心だとでもいいたいわけ」
「当たり前じゃない! あたしのほうがよっぽど、魅力的な女なんだから……!」

 彼女はすべてを失った現実を、受け止めきれずーーこの期に及んでもまだ、香月先輩に言い寄れば彼が手に入ると本気で思っているようだ。
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