一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「星奈さんは今までずっと、あんたにすべてを奪われて来た」
「違う……! あたしはそんなこと、してない……!」
「助けを乞う資格なんて、ないから」
「香月先輩……。もう……」

 彼は何度鋭利な言葉の刃を向けても口を噤まぬ陽日さんに向けて、何度も厳しく言い放つ。
 いくら私が長年、あの子に酷い扱いを受けていたとしても。
 ここまで真実を突きつける必要があるのだろううか?

「あんたが奪った妻の人生、返してもらうよ」

 そう疑問に思った私が、彼を止めれば。
 香月先輩はようやく、口を閉じた。

 ーーああ、これでやっと終わる。
 もう二度と、あの子と顔を合わせる機会は訪れないだろう。

「星奈さん、行こう」

 この状況で元気でねと別れを告げるのは、冷酷なのか……。
 私がなんとも言えない気持ちで二の句を紡げぬまま、涙を流して思い通りにならない人生を悔やむ、陽日さんを見つめていれば……。

「許、さない……!」

 あの子は瞳にメラメラと燃え上がる憎悪を滾らせると、私を鬼の形相で睨みつけてきた。
 思わず声にならない悲鳴を上げそうになった私は、ビクリと肩を震わせながら怯える。
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