一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「あんただけが幸せになるなんて、許さない!」
「陽日さん……」

 激昂した妹が、ついに右手を振り上げた。

 叩かれる前に左手から逃れようと後ろへ引くが、間に合わない。
 私は衝撃に備えてギュッと目を瞑り――。

「――俺の妻を叩こうとするなんて、いい度胸だね」

 その痛みが、いつまでもやってこないことに気づく。

 ゆっくりと瞳を開けば、陽日さんの手を掴んで止める高身長が目に入った。
 大好きな夫が、身を挺して私を守ってくれたのだ。

 ーー嬉しい。今まで誰も、手を差し伸べてなどくれなかったから……。

 泣いている場合ではないとわかっているのに。
 涙が溢れて止まらなかった。

「もう二度と、星奈さんの前に姿を見せるな」

 香月先輩は背に庇った私の手を引くと、軽々と抱き上げ店を出た。
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