一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「星奈さん。緊張してる?」
「は、はい……」
道すがら購入した老舗の和菓子が入った紙袋を握りしめた私は、夫の隣で全身に力を込めた。
本来であれば入籍前に挨拶を済ませなければならなかったのだが、ご両親と私達の予定が合わず、事後承諾になってしまったのだ。
「俺が星奈さんを好きなことは、随分前から話してあるから。今さら離婚しろなんて、言わないよ」
「で、ですが……。もし、機嫌を損ねてしまったら……」
「星奈さんを傷つけるようなことがあれば、俺が黙っていないから」
「香月先輩……」
「そんなに不安がらないで。俺がついてる」
香月先輩は私を安心させるために、離れないように指先を絡めて手を繋ぐ。
そこからじんわりと伝わる暖かな熱に火傷してしまいそうな気分になりながら。
「行くよ」
「は、はい……!」
覚悟を決めた私は、夫が実家の玄関ドアを開ける光景を硬い表情で見つめた。
「ようこそ、星奈ちゃん! 歓迎するわ!」
ーー玄関ドアの前で話している声が、室内まで聞こえていたのかもしれない。
香月先輩のお母様は、満面の笑みを浮かべて私を出迎えてくれた。