一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ーー私が我慢すればいいだけ。
 嵐が過ぎ去るのを待てば、自然と楽になれる……。

 そう何度も言い聞かせた私は、義母と香月先輩の話が終わるの待っていたのだが……。

「私は生まれつき、こう言う顔でな……」

 気まずい沈黙に耐えられなかったのだろう。
 この状況を見かねた義父が、私の緊張を解きほぐすために声をかけてきたのは。

「い、いえ……! お義父様が、悪いわけではありません……!」
「しかし……」
「い、今は見慣れないだけで! ぎこちないかと思いますが……! で、できるだけ早く! 好きになってもらえるように、頑張ります……!」

 必死に誤解を解くために勇気を振り絞り、言葉を重ねれば。
 義父は口元を綻ばせながら、か細い声で告げる。

「……君は、香月の言った通りの女性だな」

 そのくしゃりと顔を歪めて微笑む
 仕草は、香月先輩そっくりでーー。

 私はこの時になってやっと、彼の言うとおり怯える必要のない人なのだと、本当の意味で義父を受け入れられたような気がした。
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