一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む

「失礼ですが、今は……」
「……昔ほど険悪ではない。業種は違えど、公務員にはなったからな。私が妥協した」
「そうですか……」

　それはよかったとほっとしながらも、香月先輩に義父との確執を話してもらえなかった寂しさが同時に押し寄せ、うまく笑顔を作れた自信がない。

「やだ、お父さんったら！　抜け駆けするなんてずるいわ！」
「彼女を放置して、香月と話し込むのが悪い」
「私も星奈ちゃんと二人きりで、ガールズトークがしたいわー！」

　私が再び落ち込んだ様子を見せたからだろうか。

　見かねたお母様と香月先輩の会話がぴたりと止まり、明るい彼女の声が聞こえて来た。

「母さんは駄目」
「あら、どうして？」
「言わなくたってわかるでしょ」
「同感だ」

　義父と香月先輩は呆れた様子で義母を見つめながら、こくりと頷き合う。

　息がぴったりな様子を目にした私はやっぱり親子だなぁと思いながら、暖かく迎えてくださった彼のご両親に恩返しできるように、これから頑張ろうと心の中で固く決意した。