一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「むぅう～。お父さんと香月が意地悪するなら、お風呂で交流を深めるしかないわね！」
「何を言っているんだ」
「今日は挨拶だけのつもりだったから、泊まるつもりなんてないけど」
「ええ～？　泊まっていけばいいじゃなーい。お父さんと二人じゃ食べ切れないくらい、食材を買い込んで来ちゃったのに……」

　香月先輩と彼のお父さんは顔を見合わせ、義母のテンションについていけず顔を顰めた。

　二人とも、何を呆れて物が言えないようだ。
　この状況で私から提案するのは、とても勇気の必要だったが……。

　ここまでいいところが何一つない状態だ。
　私の得意なものを見せるいい機会だしと気持ちを切り替え、思い切って会話に割って入った。

「あの……。お二人がよろしければ、お夕飯をご一緒したいです」
「まぁ！　ほんと？　星奈ちゃんから提案してもらえるなんて！　私、とっても嬉しいわ！」
「母さんと一緒とか……。食事が不味くなるから、辞めたほうがいいと思うんだけど……」
「私も……。お義母様に喜んで頂けるなら、勇気を出して、本当によかったです」
「星奈さん？」

　香月先輩はご両親達と一緒の食事を明らかに嫌がっている様子を見せていたけれど、お二人が悪い人ではないのは明らかだ。
　早く打ち解けたいと、勇気を出して提案したのに。彼はなんでそんなことを言うんだと、不満そうなのが印象的だった。
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