一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「あら、ありがとう。それじゃあ、具材を切ってもらおうかしら?」
「お任せください……!」

 野菜室から取り出された4分の1にカット済みのキャベツを受け取り、まな板の上で包丁を動かす。

 小気味のいい音を響かせていれば、義母から感心したような声をかけられた。

「あら~。手際がいいのね~」
「カツサンドを、毎日作っていたので……」
「それで、キャベツの千切りが上手になったのね!」
「はい。料理は……得意な方だと思います」
「もっと自信を持って、いいと思うわ! 私なんか、包丁を握るとすぐに指を切ってしまって……」
「そ、それは……」
「危ないから、ハサミしか使っちゃ駄目って言われているのよ~! いやねぇ~。いい年して、ままごと遊びみたいで……」

 養父と香月先輩が、二人きりで料理をさせるのを反対していた理由がわかったような気がした。
 料理がそこそこできる私と、できない義母。

『なんで料理って、食材を切らなちゃいけないわけ!? 丸ごとでいいじゃん!』

 ーー包丁を握らせたら最後。
 食材を木っ端微塵にして、駄目にしてしまう。
 まるで妹のようだ。
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