一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
移動する暇すら惜しいと玄関付近で愛し合ったはずなのに。
目を覚ました私は、なぜか上半身裸の夫に抱きしめられ、ベッドに横たわっていた。
ーーあれ……? どうやって、ここまで……。
記憶が曖昧になるほど熱い一夜を過ごしてしまったのだと気づいて恥ずかしくて仕方がない。
私は身体にかけられていたシーツを手繰り寄せ、顔を埋める。
「星奈さん、起きた?」
声にならない悲鳴を上げていたのを、隣で聞いていたのだろう。
私を抱きしめる力を強めた香月先輩が、耳元で囁く。
勢いよく顔を上げて彼を見つめれば、鍛え抜かれた肉体美が視界いっぱいに映り込んだ。
ーー凄い……。
腹筋が割れてる……。
恍惚とした表情を浮かべて見つめていれば、その様子が気に食わなかったのだろう。
「上半身だけじゃなくて、俺の顔も見てよ」
不貞腐れた香月先輩に、唇を塞がれてしまった。
ーーただ口同士を触れ合わせているだけなのに。
そこから伝わる熱が全身に広がり、空っぽな私の心を満たしてくれる。