一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「夜空のフラワーガール姿、誰か撮影してるといいんだけど……」

 キョロキョロと周りを見渡した香月先輩は誰も二人にカメラを向けていないと知るやいなや、式場スタッフを呼び寄せて。
 花びらを振り撒き遊んでいる娘と青垣さんの姿を撮影するように命じた。

 カメラマンに頼むと、数十万単位で追加料金が発生するのに……。

 これも必要経費とばかりに気にも留めない香月先輩が、心配で溜まらない。
 会計、いくらになるんだろ……。

 庶民の感覚が抜けきれず、追加料金に戦々恐々としていれば。

 私の表情が曇ったことに気づいたのだろう。
 香月先輩が心配そうに、こちらを見つめていた。

「披露宴、やらないほうがよかった?」

 香月先輩が私のウエディングドレス姿を見たいと言ってくれなければ。
 その問いかけへ、素直に頷いていただろう。

 ーーけれど。

 結婚式と披露宴に参加してくれた参列者さん達が楽しそうで、娘のかわいらしい一面を激写できているともなれば――文句など、言えるわけがなかった。
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