一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
2・火災は途切れた縁を繋ぎ直す
「ただいま……」
「ちょっと。あれ、どう言うこと?」

 カフェの閉店作業を済ませ、帰路に着けば。
 先に帰宅していた妹が玄関先で仁王立ちしながら、苛立ちを隠せない様子で厳しい言葉を投げかけてきた。

「なんの話でしょうか……」

 陽日さんが私に対して怒り狂っているのは、いつものことだ。
 いちいち気にしていたら、生活などしていられない。

「すみません。長くなりそうですので、身支度を整えてからゆっくりとお話しましょう」

 その原因に思い当たる節がなかった私は、靴を脱いだあと。
 彼女の横を通り過ぎ、手を洗うために洗面所へ向かおうとしたのだがーー。

「とぼけないで! 香月と、親密そうに話をしてたでしょ!」

 妹に手首を捕まれ、怒鳴りつけられた。

 鬼の形相でこちらを睨みつける彼女に何を言ったところで、火に油を注ぐだけだ。
 だったら、すっとぼけたほうがいい。

「……陽日さんの、気の所為ではないでしょうか」

 淡々と否定の言葉を述べた私は、妹の手を振り払おうとしてーー。
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