一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「何かあったら、いつでも来て。待ってる」
「あ、あの……!」

 関宮先輩から優しい声音でそう告げられてしまった私は、完全にネックレスを返すタイミングを見失いーー。

「それじゃあ、またね」

 関宮先輩はひらひらと手を振り、私から距離を取って背を向けた。

「ま、待……っ」

 出入り口しか見ていない彼には、私の唇から紡ぎ出されたか細い静止の声が聞こえなかったようだ。

 関宮先輩はそのまま、店を出て行った。

 ーーこれ、どうしたらいいんだろう……。

 彼の手によって首元につけられたネックレスを見つめ、困惑する私をカフェ宇多見に残したまま……。
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