一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「陽日さん! 開けて……!」

 内側からドアノブをガチャガチャと何度も動かし、扉を勢いよく叩きながらどれほど叫んでも。
 彼女からの返答は、聞こえてこない。

 それは妹が、すでに扉の前にはいない証拠だった。

 ーーまた、閉じ込められた……。

 妹は怒りが頂点に達すると、こうして私を部屋に監禁してしまうのだ。

 せめて自室くらいは、陽日さんの危害が及ばぬ安全な場所であって欲しい。
 そう考えていた私は、外側に鍵をつけるのは反対していたのだが……。

『星奈は引っ込み思案で、大人しい性格をしているもの。しっかり者の陽日が管理してやらないと、どんな事件に巻き込まれるか……』
『そうだな』
『ありがとう! パパ! ママ!』

 両親は生前妹を溺愛していたため、彼女の意思を最優先にしたのだ。
 それから私はずっと、陽日さんに怒られるたびに籠の中の鳥と化している。

『あたしの言うことを素直に聞いて実行するくらいしか取り柄のない人が、他の仕事なんかできるわけがないでしょ?』

 何度もあの子と離れようとしたけれど、アルバイトの面接すら受からない状況ではどうしようもない。
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