一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
――なんだか口の中が乾燥して、イガイガする。
意識を覚醒させた私が最初に感じたのは、喉の違和感だ。
焼け焦げた匂いが、部屋中に充満していた。
薪を焚べた火が、パチパチと弾けて大きな炎となって燃えるようなーーそんな特徴的な音が、間近で聞こえてくる。
それを耳にした私は、言いようのない不快感を感じて胸元を抑えながら。勢いよく飛び起きた。
「ごほっ、ごほっ」
上半身をベッドの上から起こした私の目に飛び込んで来たのは、モクモクと上空に漂う白い煙だった。
咳き込みながら視線を下に向ければ、ベッドの脇にオレンジ色の光が視界いっぱいに広がる。
これ、なんだろう……?
喉を抑えながらゆっくりとそちらの方へ再び顔を上げれば。
見慣れた自室の床が、火の海になっていると気づく。
「ひ……っ!」
天井に備えつけられているはずの火災報知器は鳴っておらず、スプリンクラーも作動していない状況だ。
炎の勢いはとても強く、リビングや玄関に繋がる出入り口の扉へは到底近づけない。