一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「お疲れ様でした」

 作業着から私物のスーツに着替え、荷物入れの扉を勢いよく閉める。
 その音に驚く同僚達に向かって勢いよく頭を下げた俺は、足早にロッカールームをあとにした。

「ちょっ! 待ってくださいよ~!」

 ーー着いてくるなって、態度で示したはずなんだけどな……。

 その場のノリだけで生きている青垣は、この程度の威嚇は屁でもないのだろう。
 彼は当然のように、俺の後ろをついてきた。

 それがありがたくもあり、迷惑でもある。

 後者の感情が勝っているせいか。露骨に嫌そうな顔をすれば。
 青垣は左右を見回しながら、悪びれもなく痛い腹をついてきた。

「小隊長って、普段はあっちの方向に帰りますよね? こっちは真逆っすよ?」

 救助活動の際には聞き取りやすいと評判のよく通る声は、町中では騒音にしかならない。
 俺は苛立ちを隠しきれぬまま、満面の笑みを浮かべる彼の声を聞き流していた。

「火事の夢って、縁起がいいらしいっす! このまま二人仲良く、ゴールインできるといいっすね!」

 わざとじゃないからこそ、余計にたちが悪い。
 信号待ちの際に足を止めた俺は、青垣を振り返り睨みつけた。
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