一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「宇多見が喜んでくれるような服! 張り切って、探すっすー!」

 青垣の大声を耳にした店員が、ぎょっとした様子でこちらを凝視する。
 彼が星奈さんの服を探しているとはっきり宣言してくれたから、やがて不躾な視線は薄れて行ったけど……。

 ――これもあの子を喜ばせるためだと思って、我慢するしかないか……。

 そう決意した俺は、彼女が身に纏う洋服を物色し始めた。

 *
 ーー俺の働く消防署では、三部制を取り入れている。
 隊員達を三つの班に分類し、交代で勤務していた。
 24時間の当直、非番を挟んで休日を繰り返し、月に一度8時半~17時半の日勤勤務を行う。
 事務仕事や訓練などがなく、緊急出動で呼び出しを受けさえなければ、非番は休みだ。

 24時間の勤務を終えた俺は、星奈さんの顔を間近で見るために。
 普段であれば、彼女が働くカフェへ昼食を取るのだが――。

 未明のマンション火災により、彼女は住む場所を失っている。

 朝起きてすぐ今まで通りの日常に戻ることはないだろうと判断し、今日は生活に必要な物を勝手から帰宅する予定だった。
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