一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
8年前:高校時代の俺と君
「いいか。香月。関宮家に生まれた以上、警察官になれ。それ以外の職種は許さん」
幼い頃から耳がタコになるほど言い聞かせた命令は、大人になった今でも思い出すたびに苛立って仕方ない。
その言葉にうんざりした当時の俺は、父親を困らせるためだけに高校生デビューをした。
「まぁ……。反抗期かしら……?」
黒髪で地味な印象を与える、無気力な息子が――高校生になった途端。
金髪に染めて、耳に穴を開けたのだ。
その姿を目の当たりにした母親は、困ったように首を傾げーー。
「ふん。くだらん……」
息子を目にした父親は一言、そう吐き捨てた。
外見を変えた程度では、その程度の言葉しか引き出せないのか。
――失敗した。
なら、もっと派手な出来事を起こすしかない。
悪い方向に発想を転換させた俺は、あえて警察官を志す人間とは真逆の連中と、進んでつるむようになった。
ーー交際した女の数を競ったり、喧嘩っ早い奴らと殴り合ったり。
くだらないことで言い争い、すぐにカッとなる連中の中にいると、段々と普通がわからなくなる。
「関宮くんとは、関わらない方がいいよ」
そんな噂を同級生達に流された結果。
教室では、孤立するようになった。
俺は彼らにとって、おっかなくて。
手に負えない存在であるらしい。
なんだか、な。
別に、誰彼構わず好かれたかったわけじゃないから。
別にいいけど……。
地味で不気味だとイジメられるのと、殴られるかもしれないと怯えられるのなら。
どちらがマシなんだろう?
俺にはそれが、よくわからない。
その答えを、探す気にもならなくて。