一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 現状に満足できなかった俺が、居場所を求めて彷徨い歩いていた時にーーあいつと出会った。

「あ! うちの高校一番の不良!」

 初対面の印象は、なんだこいつ。

 俺が悪い奴らとつるんでいたのは、父親が警察官になれと強要してきたからだ。
 別に好きで、なったわけじゃない。
 息子を自分の都合がいい操り人形として、利用するのを諦めてさえくれたら。
 真人間に戻るつもりだった。

 俺自身はなんの罪もない人間に、いきなり殴りかかるような危険人物ではない。
 髪を染めて悪事を働くグループに所属している程度で、不良扱いされるのは心外だ。

 俺はすぐさま、騒がしい男子学生の前から姿を消そうとしたんだけど――。

「ちょうどいいところに! 大変なんすよ! クラスメイトが、喧嘩していて……!」

 あいつは俺を、呼び止めてきた。

 困っている人を助けて、懲らしめるとか。
 警察官みたいなこと、俺がするわけがないのに。

「ちょっと、こっちに来てもらえます!?」

 声を掛けてきた男子生徒は俺の手首を掴むと、無理やり引き摺っていく。
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