一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「なんで俺が……」
「いいから!」

 ーー俺よりも身長が低くて細いのに。
 握力だけは振り払えないほど強いとか……。
 人は見かけによらないって、こう言うことなのかと感心していれば。

「お姉と家族になんて、ならなきゃよかった!」

 俺はそこで、運命の出会いをする。

「ご、ごめんなさい……」
「双子だって、間違えられるし……! こんなのと半分だけでも血が繋がってるとか、あり得ないんだけど!」

 二つに結わえた髪を振り乱して。
 怒り狂う妹に怒鳴られる女子生徒は、冷たいアスファルトの上に腰を下ろし、申し訳無さそうに眉を伏せて視線を落としている。

 伏し目がちなその瞳が、悲しみではなく喜びでいっぱいになったら。

 あの子はどんな風に、笑うんだろう?

 ひと目見ただけでも、大人しそうだとわかる垂れ目と真っ白な肌。
 今にもどこかに消えてしまいそうなオーラを放つ彼女が、満面の笑みを浮かべた時――きっと、慈愛に満ちた表情をするんだろうな。
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