一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「オレ、消防士になりたいんすよ。先輩も、一緒にどうすか?」

 筋トレが趣味の後輩に誘われた俺は、そうして消防士になると決めた。

 警察官にだけは、なりたくなかったけど。星奈さんと添い遂げるためには、安定した職業に就く必要があったからだ。
 公務員だし、民間に務めるよりは両親を説得しやすいと考えての選択肢だったがーー。

「何を考えているんだ!」

 ーーその見通しは、甘かった。

「警察官になりたくないと反抗した次は、消防士になるだと!? 貴様のような腑抜けが、人を救えるわけがない!」

 当然父親には反対されたが、俺には残念ながら前科がある。
 頑なに拒絶し続ければ、取り返しのつかない凶行に及ぶのではと危惧したのだろう。

「お父さん……。もう、いいんじゃない? 香月の好きに、させてあげましょう?」
「く……っ」

 母親を味方につけてどうにか父親も了承を得た俺は、星奈さんとつかず離れずの距離を保ちながら。
 どうにか無事に、高校生活を終えた。
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