一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「卒業、おめでとうございます……」

 ーー卒業式の日に星奈さんから声をかけてもらえるなんて、思わなかったから。すごく嬉しかった。
 俺は舞い上がっているせいか、満面の笑みを浮かべて彼女にお礼を告げた。

「ありがとう」
「あの。これ……。よかったら……」

 ーーあの子は俺に、紙袋を手渡した。
 その中には小さな箱が入っている。

「開けてもいい?」
「どうぞ」

 俺は一言断ってから、その中身を開封する。
 そこには、今耳たぶにつけているものとよく似たデザイン、シンプルなオレンジ色のピアスが入っていた。

「俺にくれるの?」
「たくさん、お世話になったので……」

 あの子に気のある素振りを見せるたびに。
 星奈さんは妹の機嫌を損ねたくないと怯えて、俺を遠ざけていたけど……。

 こうやってお礼の品を最後に手渡してくるあたり、まんざらでもなかったと受け取るべきだろう。

 ーーよかった。
 本当に嫌われていたら、どうしようかと思った。

 あとはこのまま、俺のことが好きで。ずっと一緒にいたいと言う言葉を引き出せたら、いいんだけど……。
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