一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
『どうしてあたしの許可なく、お客様の前に出たの!?』

 私は心の中で苛立ちを隠しきれない様子の陽日さんに聞かれた時、回答できる尤もらしい言い訳を考えると、手を洗ってから息を殺しーーお客様を出迎えた。

「いらっしゃいませ。何名様……」

 ーー案内を待つ男性客の顔を間近で見上げた瞬間。
 呼吸が止まった。

 ーーもう二度と、会うはずなんてないと思っていた。

 彼が高校を卒業してから7年近くが経過した今になって、再び顔を合わせることになるなど、思いもしていなかったから……。

「関宮、先輩……」

 ーー長い沈黙の末。

 唇を震わせながら。
 どうにか、彼の名字を……。
 今にも消え失せそうな声で呼べば。
 あの人は7年前と変わらぬ優しい微笑みを浮かべて、ひらひらと手を振った。

「久しぶり、星奈さん」

 彼の名前は、関宮香月。
 年齢は1つ年上の、26歳。

 ーー学生時代。
 関宮先輩は私にとって、心の支えになっていたから。

 その感謝を伝えるため、誕生日にプレゼントしたオレンジのマグネットピアスをーー彼がまだ身につけているのには、すぐに気づけた。
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