一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む

現在:彼女に対する執着心


 運も実力のうちと、よく言うが……。
 チャンスは思いもよらぬところから、舞い込んでくるものだ。

 今度は絶対に、失敗などできない。
 何があっても必ず、あの子との縁を手繰り寄せる。

 そう覚悟を決めた俺が、重たい荷物を両手に持ったまま帰路につけば。

 玄関ドアを勢いよく開けた瞬間ーー廊下に膝を抱えて丸まっている、星奈さんの姿が目に入った。

 ――ベッド、勝手に使ってよかったのに。

 いくら俺が遠慮しなくていいと伝えたところで、あの子は控えめで真面目な性格をしているから。
 きっと遠慮してしまい、家主の許可なく勝手に動き回るのは憚られたのだろう。

 ――隅っこの邪魔にならない場所で寝ているあたりが、星奈さんらしいよね。
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