一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ーーその直後。
 視線を交わらせた星奈さんから、不安そうな声が聞こえてきた。

「私のことが好きって、本当、ですか……?」
「そうだよ」

 ーーやっぱり、聞いてたか。

 それがよかったと思うと同時に、後悔する自分もいて。

 柄悪く舌打ちをしかけて、ぐっと唇を噛みしめる。
 この状態でそんな態度を見せれば。
 愛しき星奈さんから、悪い方向に受け取られる危険性を危惧したのだ。

「私のことを、何も知らないのに……?」
「知ってるよ」

 彼女は不安そうに瞳を揺らしながら、俺に問いかける。

 あの子の周りにはいつだって、彼女の輝きを鈍らせる女狐がいた。
 星奈さんはきっと、忌々しい女のせいで、自分がどれほど魅力的な女性であるかに気づけていないから。
 俺以外の異性に、好意を向けられた経験がないんだろう。

 だからこそ。
 好意を寄せられた理由がわからず、困惑しているのかもしれない。

 この子が女狐に黙ってやられてばかりなのは、これ以上傷つきたくない。
 今より不幸になりたくないと願うからこその、自己防衛なんだろう。
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