一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ――泣き顔までかわいいなんて、反則だ。

 ゆっくりと右手の人差し指を使って唇を撫でつければ、不思議そうな顔をした星奈さんがその指先から逃れるように上半身を揺らす。

 長い間水分を取っていないせいで、そこはカサカサと乾燥してしまっていた。

 ーーこの先を、想像したせいか。

 星奈さんの頬が、あっと言う間に赤く染まった。

 潤んだ瞳が、物欲しそうな目が。
 俺だけを見ている――。

「星奈さん、俺の……」

 このまま押し切ればいけるかもしれないと確信を持ち、抑えていた気持ちを開放しようとした瞬間ーー。
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