一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「すぅ……。すぅ……」

 星奈さんの唇から規則正しい寝息が、聞こえてきた。

 ――寸止めか……。

 どうでもいい人間相手だったら欲望のままに彼女の身体を貪り食らうが、相手は世界で一番大切にしたい女性だ。

 これ以上嫌われて縁が途切れるのだけは、絶対に避けるべきだった。

 ーーやめろ。手を出すな。
 星奈さんに嫌われたくないのなら。

 そう何度も自分に言い聞かせた俺は、気持ちよさそうに眠る星奈さんの上に、仕方なく布団をかけてやった。

 ーー今日のところは、添い寝で我慢してあげる。

「おやすみ、星奈さん」

 俺は彼女の首元に顔を埋めると、逃げられないように折れそうなほど細い身体をきつく抱きしめ――ゆっくりと目を閉じた。
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