一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「もう、よそ見したら駄目だよ。これから星奈さんは、俺とこの家で一緒に暮らすんだから」
「勝手に決めつけないでください……!」
「俺と同居しなかったら、どうするつもり?」
「そ、それは……」

 関宮先輩が火災現場に残された私を救助したのは、仕事だからだ。

 ーー自惚れてはいけない。

 想いを通じ合わせたなんて妹に知られたら、その幸せはあの子の手によって粉々に粉砕されてしまうのだから。

「他に頼れる人なんて、いないよね?」

 関宮先輩は私の交友関係が片手で数えられるくらいしかないほどに狭いと、よく知っているけれど。

 人ではなく、場所にならば心当たりがあった。

 私の手元にカフェの鍵はないけれど、店の出入口付近には陽日さんが合鍵を隠して置いてあるはずだ。

 それを手に入れさえすれば、衣食住はどうにでもなる。

 彼を頼らなくても、生きいけるのだ。
 こんなふうに逃げ道を塞がれる理由はない。

「これからのことを考えてないなら、外には出せないよ」
「関宮先輩に行動を制限される謂われは、ありません……!」

 遠回しの否定では彼に伝わらないとはっきり認識した私は、強い口調で叫ぶ。
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