一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 このままでは、勘違いしてしまいそうだ。
 私が、価値のある人間なんじゃないかと。
 陽日さんなんかの言いなりになる必要もない、素晴らしい女性だとーー。

「どんなに拒絶されてたとしても、俺は絶対に諦めない。君のことを、愛しているから」

 このままでは、平行線だ。

 何を言ったって、関宮先輩は私を諦めるつもりがないのだから。
 普段と同じように口を閉ざして、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。

 ーー本当に、それでいいの? 

 私が素直な気持ちを関宮先輩に打ち明ければ、丸く収まるのに?

 妹に怒られるのが怖いからと意固地になって、前に踏み出す勇気がない。
 そんな自分とはさよならしなければと、あれほど心の奥底で望んでいたのに。

 ーーこれはチャンスだ。
 あの子からかけられた呪いを解くのは、一人では難しいけれど。

 私を愛してくれる彼が一緒なら。
 きっと、今度こそ。
 妹の呪縛から、解き放たれる。

 そんな希望に満ち溢れた指先を、差し伸べられたら。
 もう、見てみぬふりなんてしてはいられなかった。
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