一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「これからよろしく」

 ――窓から射し込む光を浴びて輝く強靭な身体と、力強く私を抱き寄せる上腕二頭筋が恨めしい。

 こうして強引に手を差し伸べて貰えなければ、何もできない自分が悔しくて。
 惨めで、最悪な気分だったけれど。

 関宮先輩に弾んだ声でそう声をかけられた私は、勇気を振り絞って彼から差し伸べられた大きな手に、自らの指先を触れ合わせた。

「私はまだ。関宮先輩を、完全には……。信じたわけでは、ありませんから……」
「うん。今はそれでいいよ。俺は星奈さんに、何かしてほしいわけじゃない。俺が、星奈さんにしてあげたいんだ」

 私が負け惜しみのような言葉を口にしても。不機嫌にはならなかった。
 関宮先輩は私に、見返りを求めるつもりはないと言う。

 ーーわかっている。無償の愛など存在しないって。
 いつか必ず、終わりが来ると。

 それまでに私が素直に、自分の気持ちを打ち明けられるかが、運命の分かれ道になるだろう。
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