一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「昨日の今日で普段通り出勤するのは、止めたほうがいい」
昼食を取り終えたあと。
関宮先輩から、仕事に行くなと苦言を呈された。
妹の無事を一目でいいから確認したかった私は彼の静止を振り切り、カフェへ向かうと決めたのだけれど……。
「じゃあ、俺の買ってきた服に着替えてくれる?」
満面の笑みを浮かべた関宮先輩から、交換条件を提案されてしまった。
大量購入された女性用の服から好きなものを見繕い身に着けろと言われても、困惑するしかない。
「これとか、似合うんじゃない?」
関宮先輩は私が洋服を選ぶなら絶対に着ないフェミニンな女性らしいワンピースやスカートを見せびらかしながら、身に纏うように勧めて来たからだ。
見ているだけでも、目眩がする。
私がどんどんジト目になって行く姿を、目にしたからだろう。
彼はしょんぼりと肩を竦め、不安そいに問いかけた。
「俺が選んだ服、気に入らなかった……?」
普段は自信満々な彼の口からそんな声音が紡がれたら、頷く気にもなれない。
これらはすべて、全財産を失った私に対する関宮先輩からのご厚意なのだ。無碍にすれば、罰が当たる。