一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 どちらにせよ、彼の用意してきた服を身に纏わなければ……。私の手元にあるのは身に纏っているパジャマだけ。
 厨房に引き籠もっていれば問題ないけれど、最近はホールにも顔を出している。
 このままの状態で出勤するのは、カフェ宇多見の評判を落としかねない。

 ーー来店客が心ない言葉を投げかけてくるような人達だと、思っているわけではないが……。
 陽日さんの狂信者化している常連客の皆さんは、何をしでかすかわからぬ恐ろしさがある。

 せっかく関宮先輩がお金をかけて、用意してくれたわけだし……。
 身につけないと洋服達がかわいそうだと考えを改めた私は、彼の好意をありがたく受け取ると決意した。

「いえ……お洋服は、とても素敵です。ありがとう、ございます……」
「うん。ぜひ、着てみて」

 関宮先輩に促された私は脱衣所に引っ込むと、白のフリルつきブラウスにさくら色で膝丈のフィッシュテールスカートを身に纏い、彼の前に再び姿を表した。

「どう、でしょうか……」
「すごく、かわいいけど……。似合いすぎて、心配だな」

 言葉の意味がわからず首を傾げれば、彼はわかりやすく補足説明をしてくれる。
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