一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「ーー星奈さんのことを好きになる男が、出てきそう」

 関宮先輩は絶対にあり得ない取越苦労を口にしたあと、私を当然のように抱き上げた。

「せ、関宮先輩!?」

 思わず大声で叫べば、弾んだ彼の声が響く。

「今日は、休みだから。星奈さんの、ボディーガードになってあげる」
「ひ、必要ありません……!」

 考えるまでもなく即答したところで、鍛え抜かれた身体を持つ関宮先輩の上から逃れようと試みても。
ひ弱な身体ではびくともしない。

 彼は玄関に置かれた女性物の黒いローファーをご丁寧に左手で持つと、靴を履いて外に出てしまった。

「関宮先輩……!」
「あんまりうるさいと、唇を塞ぐよ?」

 その言葉を耳にした私は、慌てて唇を両手で塞いだ。
 彼の手に自ら触れる覚悟は、どうにかできたけれど。
 関宮先輩を好きだと声に出すのは、今すぐには難しい。

 このような状況で口づけなどしたところで、虚しいだけだ。
 身体だけの関係になんて、進みたくなかったから……。

「そんなに俺とキスするの、嫌なんだ……」

 そんな思いを懐いた末の拒絶だったのだが……。
 彼はどうやらそれに、強いショックを受けているようだ。
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