一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「俺はいつだって、星奈さんとしたいのに……」

 私を抱きかかえたまま。しょんぼりと肩を落としてトボトボと歩く姿が珍しくて。
 彼の腕の中で、思わず顔色を覗ってしまった。

「唇同士を触れ合わせる行為に、意味があるとは思えません」
「気持ちを通じ合わせたら、たくさんしようね」
「どうしてそうなるんですか……」

 今度はこちらが頭を抱える番だ。

 呆れて物が言えない私はすぐさま機嫌を直した関宮先輩に抱きかかえられたまま、妹が店主を務めるカフェへ向かった。

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