一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
関宮先輩とカフェに到着した私は、扉に立てかけられたプレートが“close”のままなのを確認し、ため息を溢した。
「誰もいないみたいだけど」
「はい。そう、ですね……」
ーー昨日の今日で、営業しているわけがないか……。
カフェ宇多見に出勤さえしてくれば、彼女を求めてやってくる常連客の手前。
コーヒーマシンのボタンを押したり、彼らとおしゃべりを楽んだりする姿が見られるけれど……。
あの子はどちらかと言えば、プライベートは不真面目な部類だった。
約束は当然のようにすっぽかす。
やっと来たと思ったら、一時間遅刻してくる。
我が妹ながら、悪びれもなくよくもまぁ、堂々としていられるなと思うような酷い状況だ。
ーーそんなあの子が誰かに迷惑をかけたら、謝罪をするのはいつも私。
手元に携帯があれば、繋がるまで何度もリダイアルを繰り返していたけれど……。
妹の携帯番号を暗記していない私は、あの子と連絡の取りようがなかった。
ーー仕方ない。
店主の陽日さんがいなくても、私だってカフェ宇多見の従業員だ。