一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ーーそんなの見学したって、なんの面白みもないはずなのに……。

 私は関宮先輩とこのカフェで再会してから。
 彼を顔を出すたびにこちらをじっと見つめ、目で追っていたのを思い出す。

 ーー私も好きだった。
 関宮先輩が熱っぽい瞳を浮かべ、時には嬉しそうに口元を緩めがら。
 私の働く姿を、観察している姿を横目で確認するのがーー。

「わかりました。勝手にしてください」
「うん。好きにする。永遠にお客さんなんて、来なければいいのに……」

 こんな些細な出来事すらも、同じ意見になるのかと驚きながら。
 彼に何を言っても無駄だと悟った私は、コーヒーを定期的に注ぎ、関宮先輩はいないものとして扱おうと決めた。

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