一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「いらっしゃいませ」

 心の奥底で渦巻く、自分でも理解できない気持ちに困惑していれば。
 ーー来店を告げる、ベルが鳴った。

 私は厨房から出て、お客様の元へと向かう。

「あれ。君は確か、陽日ちゃんのお姉さん……?」
「何名様でしょうか」
「一人だけど……」
「こちらのカウンター席にどうぞ」

 妹の不在を知り、帰りたそうにしている男性客を席に案内すれば。
 何度も手にしたスマホと私の顔を行ったり来たりさせながらも、挙動不審な様子でカウンターに腰を下ろす。

「メニューがお決まりになりましたら、お呼びください」
「あの」

 その様子を二人用のテーブル席に座って観察していた、関宮先輩の視線が痛い。
 眉を顰めながら奥へ引っ込もうとすれば、さっそく男性客から呼び止められてしまった。

「お伺いたします」

 陽日さんを探していたのであれば、常連客である可能性が高い。
 たとえ一度もメニューを開いてなくても、頼むものは決まっているのだろう。

 そう判断をした私はさっそく、伝票とペンを手に。
 注文を聞こうとしたのだがーー。

 男性客はスマホを掲げながら、私の想像もしていなかった言葉を口にした。
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