一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 朝から晩まで人が押し寄せてくるレベルになれば、陽日さんだって常連客と呑気におしゃべりをする時間すらなくなるだろう。
 そうなれば、褒められるどころか嫌われてしまうのでは?

 ーーそんな本音をぶちまけたいのは山々だが、常連客らしき人物と後々トラブルになったと妹に知られたなら、怒られるのは間違いなく私だ。

 この男性客がSNSに私の写真を投稿することで、満足するなら……。
 ここは黙って耐えるしかない。

 ーー逆上されても、怖いし……。

 そうした諦めにも似た感情を、私が抱いた時だった。

「それ、犯罪だよね」

 二人がけのテーブル席から立ち上がった関宮先輩が、ツカツカとこちらまで苛立った様子でやってきたのは。

「な、なんだお前は……!」
「何って、星奈さんの彼氏だけど」
「ち……っ」

 当然のように男性客に告げた彼の言葉を否定しようとすれば、空いている左手で唇を塞がれてしまった。

「これ、ちょっと借りるよ」
「か、返せ……!」

 関宮先輩は戸惑う常連客に一言声をかけてから、その人の手にしていたスマートフォンを強引に奪う。
 その後、素早い動きで画面をタップする。
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