一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「ですが……」
「今日は俺がいるからいいよ。でも、明日は? ああ言う変な奴が押し寄せて来たら、星奈さんを守れない」
「た、たまたまですよ。毎日あんなのが、来るわけでは……。陽日さんだっていますし……」
「あの女は星奈さんを守るどころか、地獄に突き落とすでしょ」

 ーー関宮先輩は、私と陽日さんの関係をよく理解している。

 問題が起きたら妹は、姉の私を犠牲にして一目散に逃げていくタイプだ。
 昨夜未明に起きた、火災のように。

「俺の見ていないところで星奈さんが傷つくのは、嫌だから」

 こうして身を挺して守ってくれる。
 頼りがいのある人はーー関宮先輩以外、知らなかった。

 ーー彼はどうしていつも、あの子がいないところで私に優しい言葉を投げかけて来るのだろう。

 妹がいれば、陽日さんを理由にその好意を突っぱねられるのに。
 こうして何度も迫られると、罪悪感でどうにかなってしまいそうだ。

「あの女のいないところで、頑張る必要なんかないでしょ」
「ですが……」
「帰ろう。ね?」

 関宮先輩から強く促された私は、自身の意志を貫き通し切れずーー。
 渋々、こくんと頷いた。
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