一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「わかり、ました」
「うん。ありがとう。ごめんね」

 無理に了承させたのではないかと申し訳無さそうに告げた彼は、そのお詫びとばかりに来た時と同じように私を平然と抱き上げた。
 その後、しっかりと施錠を済ませてから店をあとにする。

「じ、自分の足で! 歩けますから……!」
「駄目。抱きかかえていないと、不安なんだ。星奈さんが、消えてしまいそうで……」

 関宮先輩は身長が高いため、街中で私を横抱きにしていると目立つのだ。
 行きだけではなく帰りも通行人から奇妙な視線を向けられるこの状況は、生きた心地がしなかった。

「……私は、いなくなったりしないですよ」
「信じられないんだけど……」
「どうして、ですか」
「俺、まだ根に持ってるから。高校の卒業式以来、連絡が途絶えたこと」
「それは……」

 私は当時の状況を、脳裏に思い浮かべる。
 関宮先輩は卒業式にわざわざ私へ会いに来て、薔薇の花束とともにお祝いの言葉を投げかけてくれたのだ。

『星奈さん、卒業おめでとう』

 その様子を目にした妹は怒り狂い、私のスマートフォンを破壊した。
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