このヒカリの下を、もう一度君と

満員電車に揺られ学校へと向かう。
その間、私は外の景色は絶対に見ない。

「ねぇねぇ、知ってる?
この辺で昔ストーカー殺人があったって」

私の隣で話す女の子達の会話に身体が小さく震える。

「え、マジ?」

「マジ。
なんかねー、家族全員殺されたって。
あ、違うわ、
ひとりだけ学校の泊まりのイベントいってて助かったんだってー」

「えー、それヤバいじゃんトラウマじゃん?」

「だよねー。
しかもその子、まだ小学生だった上に第一発見者?とかだったらしいよ」

「うわー、かわいそー」

女の子達の会話に私の心臓は握り潰されたみたいにぎゅっと痛くなる。
背中には冷たい汗が流れる。

「あ、ほらあそこ。
今だにロープしてるからすぐ分かるよねー」

痛い、苦しい。
目を強く閉じる。

早く、早く通り過ぎて……!

まわりに聞こえるんじゃないかと思う程に心臓は大きく早く音を立てる。

少ししてアナウンスが流れドアが開き、
女の子達は他の乗客と一緒に電車から降りていった。


再び動き出した電車の中で、
私は小さく、長くゆっくりと息を吐き出す。

頭が痛い。

……まだ、あの事件を噂する人なんているんだ。

もう6年も前の事件なのに。


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