このヒカリの下を、もう一度君と

「おはよー、陽奈!」

学校に着き下駄箱で靴を履き替えていると後ろから明るい声が耳に響いた。

「おはよう、未希」

同じように明るく挨拶を返す。
もちろん、顔には笑顔を貼り付けて。

「今日の数学、私絶対当たるんだよねー。
ヤバー」

「私は今日はセーフかな」

他愛もない話をしながら教室へと向かう。
高校2 年という、1年の時のような緊張感もなければ3年みたいに受験に追われる事もない。
正に青春ド真ん中の時期。

現に隣で笑顔で話す未希はいつも合コンだ買い物だカラオケだライブだと、楽しくて楽しくてたまらないといった感じだ。

ひとりっ子の未希は両親にもとても愛されているのが分かる。
いつも明るく笑顔で、人を疑う事のない、
素直で無邪気な女の子だから。

「私、マジで数学だけは無理ー!
パパもママも未希の数学だけはもう諦めてるもん。
未希は数学出来なくてもとにかく幸せに楽しく過ごしてくれたらそれでいいって。
そしていつかお嫁にいっても近くに住んでパパとママのそばにいてねって。
もー、ウチの親マジで過保護なんだよねー」

そう言って明るく笑う未希に私も笑顔を崩さずに相槌を打つ。
だけど、少し、
鬱陶しい。

だけどそんな感情は一切表に出さない。

私は普通の女子高生だ。
学校にいって、友達と面白おかしく過ごす。
毎日が楽しくて青春ド真ん中の、女子高生。

そんな普通の女子高生を、
私は演じる。


涼太に出会えるその日まで。



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