このヒカリの下を、もう一度君と

電車がどんどんあの場所へと近づいていく。
胸が苦しい。
いつもいつも、あの場所へと近づく度にあの記憶が思い出されて苦しくなる。

ならどうしてわざわざあの場所を通る電車に乗らなきゃ通えない学校を選んだのか。

そんなの理由はただひとつ、
……涼太に会えるかも知れないから、だ。

広瀬涼太、
私と同じ年で、あの家の隣に住む幼なじみだった。
幼い頃からいつも一緒にいた。
当時、どちらかといえば内気で引っ込み思案な私を、涼太はいつも遊びに連れ出してくれた。 
からかってくる男の子から守ってくれた。

『陽奈は俺が守ってやるよ!』

そう言って笑う涼太を好きになるのに時間はかからなかった。

明るく元気でスポーツ万能な涼太はいつもたくさんの友達に囲まれていた。
涼太の事を好きな女の子も多かった。

だけど、涼太はそんな女の子達には目もくれなかった。
もちろん、私にも。

だって涼太が好きな女の子は、
私のお姉ちゃんだったから。

6歳上のお姉ちゃんは私の自慢のお姉ちゃんだった。 
綺麗で優しくて明るくて。
笑顔が太陽みたいだった。

私の事も凄く可愛がってくれた。
ケンカなんてした事ない。
いつだってお姉ちゃんは優しくて、私の味方だったから。

ママに怒られたらいつもお姉ちゃんが庇ってくれた。
勉強も教えてくれた。
私のためにお菓子を焼いてくれたり遊んでくれた。

6歳も下の妹なんて話も合わないし鬱陶しい時もあったはずだ。
だけど、お姉ちゃんはいつだって笑顔だった。
そんなお姉ちゃんが私は大好きだった。

それは、涼太も同じだった。


『優奈姉、彼氏とかいるのかな?』

そう、はじめて涼太に聞かれた時はショックだった。
恥ずかしそうに顔を赤くする涼太を、はじめて見た。

だけど、私はお姉ちゃんの事も大好きだった。

大好きな涼太が、
大好きなお姉ちゃんの事を好きなだけ。
それだけだ。

それに、お姉ちゃんからしたら涼太は弟みたいな存在でしかないのも分かってた。

だから安心してた。
ズルいけど、涼太の恋心が報われる事はないのが、
分かってたから。

いつかお姉ちゃんに彼氏が出来たら涼太だってお姉ちゃんの事は諦めるだろう。
そしたら涼太の1番近くにいる女の子は私だ。
その時が来るのを待てばいい。

そう、思っていた。


まさか、
お姉ちゃんが殺されて、
涼太が犯人を殺すなんて、

そんな事、
想像出来るはずがなかった。




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