DEEP BLUE
「──…っ、」
突然のキスに、視界がグルンと回って海に溺れたのかと錯覚した。
目の前には、子供っぽい顔は一切捨てた“男”の太郎の顔。
不覚にも一瞬ドキッとしてしまった心臓の音を、一際大きなザァンッ!という波の音が、打ち消してくれた。
─────……このまま
あの大好きだったあの人の笑顔も
温もりも優しさも……全部全部
消してくれたらいいのに
そしたらあたしは卑怯なズルイ女になれて
このまま何もなかったように太郎と笑えて
太郎の優しさに甘えて
そしたら
そしたら────……
唇が離れ、ポロポロと涙が溢れ落ちる。
「……愛美さん。
愛美さんの好きだった人の事も、今起こっている辛い事も……
オレがいつか……
“あんな事もあったね”って笑い合える、そんな優しい思い出に変えてあげたいです。」
「……っ」
「好きな人のこと、忘れられないならそれでいいじゃないですか。
誰も愛美さんを責めたりしません。
だけどあなたと…
辛くても笑い合える仲になりたいなってオレは思います。」
「太郎…」
「あなたが“今”を乗り越えて幸せになって行くのを、オレはずっとそばで見続けたいです。
オレが笑わせたい。
………幸せにしてあげたいです。」