敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません！～干物女な小説家は容赦なく激愛される～

そして二作目に書いた歴史ミステリー『壬生浪・煮売屋推理帖』が映画化。主演俳優の人気にもあやかって、興行収入は四十億円と言われている。

売れに売れた三年後、北桜出版社が軽井沢に保養所を建てたそうだ。

どうやらそれが社員の間では『石楠花御殿』と呼ばれているらしい。私が稼いだお金で建てたとかなんとか。

「加えて、我が社と専属契約をしてくださっている」

作家はいろいろな出版社から書籍を出すものだけれど、私は北桜出版一筋。そのおかげで吉川さんが朝から晩まで私の面倒を見てくれていたわけだが――。

「売れに売れているあなたを、我が社は囲い込みたい。あなたの支援は北桜グループ最重要案件であり、社の未来に繋がる仕事です。私が将来的に経営者になるとしても、必要な経験だと考えています」

ただ家事をお願いするだけなら担当ではなくハウスキーパーにお願いすればいいが、そうさせないのは私をほかの出版社に奪われないため。北桜出版が囲い込みたいという狙いもあるようだ。