敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「ですので、家事はすべて私に任せて、先生は作品に集中なさってください。むしろ、家事をしないで仕事をしてくださいと無茶なお願いをしているのは私たちの方ですから」

はあ……と曖昧な返事をする。

頼ることで安心してもらえるなら、それも手かもしれない。

「先生のケアをしながら常に進捗を確認し、リアルタイムで相談に乗れる、編集部としては一石二鳥です。……ところで先生、本日の進捗はいかがでしょう?」

不意に尋ねられ、鍋に伸ばした手がぴくりと震えた。

ゼロとは言えず「ええとですねえ……」とまごつく私に、彼は「どうぞ食べながらお話ししてください」と勧めてくれる。

熱々、ぷりぷりの鶏肉をはふはふと食みながら「順調は順調なんですが……」と目線を漂わせた。せっかくのお鍋なのに、味が感じられない……。

「まだ読んでいただける状態ではないかと……もう少しブラッシュアップが必要かなと思っていて」

一応弁明しておくと、怠けていたわけではない。ああではない、こうではないと書いては消し、書いては消しを繰り返しているうちに、結果的に〇字になっただけ。

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