敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
私も八年前に受賞した関係で毎年招かれるけれど、周囲に笑顔を振りまくのはちょっぴり面倒くさくもあって、ここ数年は締切を理由に欠席していた。

今年も同じ理由で逃げたいと思っていが、湾先生が挨拶に登壇するらしく、ファンとしては見逃せず心が揺れている。

「誓野さん、これって私、やっぱり出た方がいいんでしょうか」

キッチンで昼食を準備する彼に問いかけてみると、「むしろ翠さんが主役です」と笑顔で返されてしまった。

「いや、主役は受賞者でしょう?」

「受賞者にとっての主役は、一番派手にご活躍されてる翠さんだと思いますよ。ここだけの話、今年の受賞者は二十代の女性で、翠さんの大ファンだそうです」

「そ、そうなんだ……」

うーんと顎に手を添えて悩む。

挨拶したら喜んでくれるかな。私も授賞式で湾先生に話しかけてもらえたときは嬉しかったなあ……。

誓野さんがミトンをはめてキッチンからグラタン皿を運んでくる。

「湾先生のお話も聞けますよ。興味ありません?」

「それなんですよねえ、一番心惹かれるのは……」

「よかった。頑張って調整したかいがありました」

え、誓野さんの差し金なの!?

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