敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
表通りはオフィス街、だが裏通りは一転して閑静で、大きな邸宅が立ち並んでいる。

住んでいるのはおそらく地主たちだろう、そんな豪華な家々の中に彼の住む平屋の一軒家もあった。

かなりの広さのあるお屋敷だが、とにかく年季が入っている。

「祖母が結婚する前に暮らしていた家なんだ。もう住む人もいないから売りに出してしまおうかって話も出ているんだけど、本人が嫌がっていて。かといって誰も住んでいないと物騒だっていうんで、俺が使わせてもらってる」

説明する彼をよそに、私は玄関口でわなわなと唇を震わせていた。

「とっても素敵な日本家屋じゃありませんか!」

まさに私が住みたかった趣ある家。大正、昭和の息吹を感じられる住まいだ。

「あの合宿はなんだったんです? わざわざ県外まで行かなくてもここで書けばよかったじゃないですか」

「……さすがに男の家に招くのはどうかと思ったんだよ」

それはごもっとも。

それに窓の外に広がる景色はビル群で、情緒も何もない。

「とりあえず気に入ってもらえてよかった。中はフルリノベーションしたから、イメージと違うかもしれないが」

玄関に足を踏み入れると、彼の言う通り室内はピカピカのモダン建築に生まれ変わっていた。

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